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  水温の安定した水深のある岩礁などで越冬したチヌが水温の上昇とともにようやく出てきて、海底のシモリなどを伝って沖から湾内の浅場へと移動するようになる。いわゆる「乗っこみ」が始まるのである。奄美大島では年明け早々、四国南部では3月初旬、紀伊半島では3月下旬と徐々に東へと乗っこみ時期が移動していきます。産卵に備えて荒食いするので、年無しと出会えるチャンスが一番大きい時期であると言えます。でも、湾内より磯場の方が年無しの顔を見る確率が高いと言えます。
  浅場へと移動してきたこの季節、磯場でも、波の穏やかな湾内の波止でも、沖合の一文字でもエサとなる小魚の回遊も盛んになり、エビ、カニ、ゴカイなどの動きも活発になるので、チヌの活性も上がり、波止周りのシモリやテトラや壁面などに居着くようになる。朝夕、日中、夜間問わず活動するのもこの時期である。ただ、日中は水温が高くなりすぎると、海水中の酸素濃度が薄くなって動きが鈍くなり、直射日光の当たらない藻の生えた壁面やテトラなどにじっと休んでいることも多い。
  いわゆるチヌの最盛期で、型より数釣りが楽しめるのもこの時期である。秋が深まるにつれて、越冬に備えて体に脂肪を蓄えるために、旺盛に補食するようになる。ただ、この時期は水温が不安定なので浅場と水温の安定した深場を行ったり来たり移動することも多い。晩秋はより水温の安定した深場を求めて湾内を離れていくので、湾内でチヌを釣るのはだんだんと難しくなってくるだろう。
  ひと昔前はチヌも水温の安定した沖合の深場へと移動するため、チヌ釣りのオフシーズン(特に紀州釣りでチヌを狙う人にとっては)だったこの時期は、年中湾内で釣りを楽しむ家族連れや無類の釣りキチたちが撒いたオキアミやアミエビなどで磯場に行かずに湾内に居着くチヌ(いわゆる「居着き」)が増え、季節を問わず湾内でチヌ釣りを楽しむことができるようになった。チヌ釣りのオフシーズンがなくなったと言える。とはいえ、釣れない日も多い。

  チヌは雑食性で「悪食家」と呼ばれ、エサとして使われているものはオキアミをはじめ、シラサエビ、カニ、アケミ貝などの貝類、ボケ、サナギ、ゴカイなどの虫類、フナムシ、フジツボ、イソギンチャク、スイカ、コーン、人工の練りエサなど幅広く、口にできるものなら何でも食す。ただ、季節によって好むエサは違う。冬から春先の低水温期はやわらかいエサを好み、夏から秋の比較的水温が高い時期は固いエサを好む。この好みをしっかり把握してエサの選択をチヌと出会えるチャンスはぐーんと高くなると言えよう。

  中国からアフリカ東岸までの沿岸、オーストラリアなど広域に生息が確認されている。日本では石垣島以南でしか確認されていない。汽水域を好み、河口付近や淡水に多く生息している。側線上方の鱗の数は3.5枚である。

  1984年にミナミクロダイがもう一つの種類に分けられた。側線上方の鱗の数は4.5枚だが、体全体が白っぽく、腹鰭と臀鰭が白っぽいか黄色、尾鰭の後が黒いなどの理由でオーストラリアにいるクロダイ属と同種とされた。沖縄では「チンシラ(白いチヌという意味)」と呼ばれている。

  世界中で今のところ琉球列島だけしか生息の報告はされていない。クロダイと見分けが付きにくく、鰭はクロダイと同様に灰色か暗色であるが、側線上方の鱗の数は4.5枚であるのが違う。沖縄では「チン」と呼ばれていて、琉球列島ではごく普通に釣り上げられているのである。

  「キビレ」あるいは「キビレチヌ」と呼ばれていて琉球列島には生息していない。また、クロダイより淡水や汽水域を好み河口付近に生息していることが多い。側線上方の鱗の数が3.5枚で、臀鰭(しりびれのこと)中央と尾鰭下部が黄色か淡色になっている。

  琉球列島以外では、一般的なチヌで側線上方の鱗の数が5.5枚以上で、鰭は一様に灰色か暗色である。2002年6月には拓寸ながら70.8cm(実寸68cm)という日本新記録のチヌが福岡県船越漁港にてカタクチイワシの泳がせで釣り上げらています。

  日本に生息しているチヌは5種類いて、琉球列島以外に生息しているのは「クロダイ」と「キチヌ」で、琉球列島に生息しているのは「ミナミクロダイ」と「オーストラリアキチヌ」と「ナンヨウチヌ」である。側線上方の鱗の数や鰭の色などで分類されている。

  南方系の魚で、チヌの種類によって違うが、日本、中国、台湾、東南アジア、オーストラリア、インド洋、紅海、アフリカ東岸など広域に生息しているが、チヌの釣れる北限の国は日本であるというから驚きだ。日本では北海道から沖縄まで各地に生息しているが、琉球列島に生息するチヌの種類は違う。

ナンヨウチヌ

オーストラリアキチヌ

ミナミクロダイ

キチヌ

クロダイ

チヌの種類

生息域

食性

行動パターン

 生まれてしばらくは卵巣と精巣の両方を備えた両性の雌雄同体であり、成長するにしたがって雄と雌に分化していく。2歳ぐらいになると、卵巣より精巣が発達しているものが若干多い。雌より雄の方が多いということになる。3歳ぐらいになると、精巣より卵巣が発達するものが少しづつ増えてきて、4歳ぐらいになると多くは雌として成熟する。4歳の雄でもまだ成熟していない卵巣を持っているものもいて、雄も雌になる可能性がまだ残っているということになる。そして5歳ぐらいになると、雄か雌かどちらかに完全に分かれるようになり、性の分化の完了ということになる。だから、チヌの性に関しては一般的によく言われている雄から雌への「性の転換」という考え方より、未成熟な両性の個体がしだいに「性の分化」するという考え方のほうが正しいかもしれません。

生態

 チヌはスズキ目タイ科クロダイ属に属しており、関東以北では「クロダイ」と呼ばれ、関西以西では「チヌ」と呼ばれるのが一般的である。しかし、各地方では呼び名が「チン」、「チンタ」、「カイズ」、「オヤ」などバラバラである。 また、関西では大きさによって呼び名が違ってくる。例えば、手のひらぐらいの大きさのものを「チンチン」、30cm以下のものを「カイズ」、それ以上のものを「チヌ」という具合である。特に50cmを超えたチヌに対しては「年無しチヌ」または「年無し」と言う。年無しとはその言葉通り、年が無い、すなわち長く生きているので年がわからないという意味で付けられた呼び名である。チヌ釣り師にとっては常に年無しを狙って釣行していると思う。私もそうだが。

学名 生息域 チヌの種類 生態 行動パターン 食性

学名

チヌを釣りたいのなら、まず習性や行動パターンなど、チヌに関する一般的な知識を知っておく必要がある。

チヌを知ろう